みんなの年金コラム

年末に知っておくと差がつく「税金」の話 〜基本的仕組みから、控除・経費などをやさしく解説〜

年末に知っておきたい税金の話。基本の仕組みから控除・経費などをやさしく解説

もう12月に入りましたね。
年末といえば、ふるさと納税、年末調整、控除証明書、確定申告…。
なんとなく聞いたことはあるけれど、「それって何?どう得するの?」と感じていませんか?

このコラムでは、「税金の仕組みってどうなってるの?」という基本から、「年末までにできる具体的な税負担を軽減できるアクション」まで、わかりやすく、実践的に解説していきます。

税金の計算の仕組みを理解しよう

まず、給与から天引きされるものは2種類あります。
「税金」と「社会保険料」です。

強制的にまとめて天引きされるので混同しがちですが、性質の異なるものです。

給料から天引きされる「税金」と「社会保険料」の違い

区分税金社会保険料
項目●所得税+復興特別所得税
●住民税
※東日本大震災の復興のための財源として、復興特所得税は所得税と合算で天引きされています。
●健康保険料
●厚生年金保険料
●雇用保険料
●介護保険料(40歳以上)
目的・用途国や地方公共団体が運営する一般的な公共サービス全般(教育、警察、道路、福祉など)の財源になります。加入者(国民)の特定の生活リスク(病気、老後、失業、介護)に備えるための保険料。
だれが負担する?個人(納税者)負担会社(事業主)と個人で折半(雇用保険・労災保険は例外あり)。
※住民税は、前年の所得に基づいて計算されるため、社会人2年目の6月から徴収が始まります。

税金の金額は、以下のステップで決まります。

  1. 総収入(給料・副業・不動産など)- 経費(事業や投資がある人のみ)= 所得  
  2. 所得- 所得控除(家族・保険・医療費など)= 課税所得  
  3. 課税所得× 税率(5〜45%の累進課税)= 税額  
  4. 税額 - 税額控除(住宅ローンなど)= 実際に支払う税金確定

税負担を軽くする「控除」

控除とは、かんたんに言えば「あなたの個人的な事情や特別な出費を考慮して、税金の負担を軽くするための仕組み」です。

覚えておきたい3つの控除
名称どこで引かれる?誰が使える?
経費収入から
(収入=額面の年収)
事業・副業・不動産所得がある方
所得控除所得から
(所得=収入から経費や所得控除の額を引いた額)
ほとんどの方が対象
税額控除税額から
(税額=所得からその他控除などを引いた最終的に納める税金の額)
条件に該当する方のみ

控除が必要な理由

例えば、同じ年収500万円の人でも、

  • Aさんは独身で健康な人。
  • Bさんは病気の家族の医療費を年間100万円払い、さらに大勢の扶養家族を抱えている人。

この二人を収入が同じという理由だけで同額課税するのは、税負担の重さが公平ではありません。

控除は、Bさんのような「生活に不可欠な特別な出費」や「経済的な負担」を差し引くことで、税金をかけるベースの金額(所得)を減らし、税負担の公平性を保つために存在します。

会社員でも活用できる「所得控除」

所得控除は、「課税所得」を減らす制度です。
と言われても、多くの会社員はこう思っているはず。

「会社が年末調整で計算してくれるから、それでいいんじゃないの?」

たしかに会社が算出してはくれますが、対応できるのは一部の控除のみです。
毎年秋ごろに年末調整の案内があるので、改めて「今回申請したかな?」と確認してみましょう。

主な所得控除

基礎控除

  • 条件:合計所得が2,400万円以下の全員が対象
  • 控除額目安:一律48万円
  • 年末調整:申請すればOK

扶養控除

  • 条件:扶養している家族がいること
  • 控除額目安:38〜63万円
  • 年末調整:申請すればOK

配偶者控除

  • 条件:配偶者の年収が103万円以下など
  • 控除額目安:最大38万円
  • 年末調整:申請すればOK

社会保険料控除

  • 条件:健康保険、年金などを支払っていること
  • 控除額目安:支払額の全額
  • 年末調整:原則、申請不要(給与天引き分は自動計算)

生命保険料控除

  • 条件:指定の保険に加入し証明書提出
  • 控除額目安:最大12万円
  • 年末調整:証明書添付して申請すればOK

地震保険料控除

  • 条件:地震保険加入者
  • 控除額目安:最大5万円
  • 年末調整:証明書添付して申請すればOK

医療費控除

  • 条件:自己負担額が10万円超
  • 控除額目安:支払額から10万円引き
  • 年末調整:✕です。確定申告が必要

寄付金控除

  • 条件:ふるさと納税など(2,000円超)
  • 控除額目安:寄附額から2,000円引き
  • 年末調整:✕です。原則は確定申告。ワンストップ特例制度も条件に合えば使えます。

小規模企業共済等控除

  • 条件:iDeCoなどの掛金
  • 控除額目安:年84万円まで控除可。控除は「上限額」ではなく「支払った金額そのもの」が対象です。
  • 年末調整:証明書添付して申請すればOK

所得控除は複数併用が可能です。上記の中には確定申告が必要なものも含まれます。
使えるものはしっかり確認しておきましょう。

注意!ワンストップ特例制度と確定申告は両立できない

ふるさと納税は「ワンストップ特例制度」を使い、医療費控除や住宅ローン控除は確定申告で…。と考えた方はいませんか?

確定申告を行うと、それ以前に行った全てのワンストップ特例の申請が上書きされ、無効になります。
確定申告書にふるさと納税の記載がないと、控除が受けられません。

安心してください。対応策があります

確定申告の際、住宅ローンや医療費の控除と一緒に、あなたが行ったふるさと納税(その年の1月〜12月分)の「寄附金受領証明書」を添えて全て改めて申告し直せば、問題なく控除を受けることができます。

今すぐ、寄附時に自治体から届いた「寄附金受領証明書」を全て集め、翌年3月15日締め切りの確定申告に備えましょう。

「税額控除」は効果が大きい。条件に合えば強い味方に

税額控除は、すでに計算された税額そのものから直接差し引かれる制度です。
該当する方にとっては、税負担軽減効果が高いのが特長です。

よくある税額控除
  • 住宅ローン控除
    年末残高の0.7%×最大13年
    数十万円単位の控除も可能
    初年度は確定申告で申請。二年目以降は会社へ申請
  • 配当控除
    上場株式の配当所得が対象
    所得税15%、住民税5%まで控除
    確定申告で申請
  • 外国税額控除
    海外ETFなどに対する海外課税を調整
    二重課税を回避するための控除
    確定申告で申請

 条件に当てはまる方にとっては、実質的な税負担を減らせる重要な制度です。

▼税額控除とは
こちらのケーキの例でいうと、最後に税金分のケーキがカットされる直前に「待った!」をかけて、持ち去る分(税金)が少なくなるように再計算するイメージです。

不動産投資や副業がある人は「経費」で節税

給与所得には経費の概念はありませんが、副業や不動産収入がある方は、「必要経費」として収入から差し引くことが可能です。
こちらはすべて、確定申告が必要になります。

不動産収入で経費になる主なもの
経費項目内容
ローンの金利元本は不可。金利のみ経費にできる
管理費・修繕積立金火災・地震保険など不動産の維持費用
火災・地震保険料投資物件にかけている保険料
減価償却費建物の価値を年数で分割し費用化
通信費・交通費・資料代など条件を満たせば経費として計上可能

経費が多くなると‟所得が下がる=課税所得も下がる=税金の軽減”につながります。

 年末までに間に合う!駆け込み節税アクション

2025年分の税金に間に合う年末アクションをチェックしましょう。

ふるさと納税
  • 2025年12月31日 23:59までに決済完了で、ワンストップ特例申請は翌年1月10日必着です。
  • 確定申告される方は、確定申告と一緒に翌年3月15日までに申請。
保険料控除証明書の提出
  • 年末調整書類の提出期限まで(多くは12月中旬)
  • 証明書を提出しないと控除されません
医療費控除の準備
  • 医療費の対象は2025年1月1日〜12月31日まで
  • レシートや明細を整理・家族分も合算OK
医療費控除の準備
  • 12月分までの拠出が2025年控除対象
  • 口座振替タイミングに注意

知っているだけで、税金への“納得感”は変わる

税金の仕組みは、少しとっつきにくく感じられるかもしれません。
ですが、「どこで何が引けるのか」という構造を理解すれば、無理なく・ムダなく対策ができるようになります。

  • 所得控除は、誰もが使える節税手段
  • 税額控除は、該当者には効果が高い制度
  • 経費は、副業や不動産投資をしている方にとって重要な武器

「なんとなく毎年払っている税金」から、「理解して納得して支払う税金」へ。
年末のこの時期に、ぜひ一度見直ししてみてください。

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